皆さんは、地元の行政に自分の声がなかなか反映されずに、もどかしい思いをしたことはないでしょうか?どうしても「遅い」「効率が悪い」と思われがちな行政のプロセス。東京では今、AIを使って変革しようという動きが起きています。
【写真で見る】「秘密基地としては最高やな」ガレージっぽい安野貴博さんの作業場
東京都の未来をAIで変えたい “異能”のAIエンジニアに密着
薄明りに照らされたドアから出てきたのは、AIエンジニアの安野貴博さんです。
AIエンジニア 安野貴博さん
「こちらが作業場になります。このシェアオフィスの人が、『イノベーションはガレージの中から起きるんだ』ということで、全部の部屋をガレージっぽくしてる」
「これは秘密基地としては最高やなっていうことで、ここを選びましたね」
オフィスには、仕事で使うパソコン以外に趣味のゲーム機材なども並んでいます。
安野さん
「これもお気に入りというか、よくわかんない機能ですけど、(照明の)色温度が変わるっていう」
――暗い方がいいんですか?
「暗い方が落ち着きますよね。集中できる感じ」
安野さんは東京大学でAI技術を研究したのち、スタートアップ企業を設立。現在はAIエンジニアとしてだけでなく、SF作家としても活動しています。
安野さん
「多方面に見えるんですけど、根本的にやっていることは一緒で、テクノロジーを通じて未来を描くことをいろんなフォーマットでやっている」
そんな安野さんが今回、アドバイザーとして加わったのが2050年代の東京が目指すべき姿を、AI技術を活用して立案するプロジェクトです。
安野さんと言えば2024年、東京都知事選挙に立候補。新人ながら、15万票以上を獲得していました。
なぜ今回、“ライバル”だった小池知事のプロジェクトに協力したのでしょうか。
安野さん(2024年12月)
「東京都知事になれなかったですけど、そのときにやりたかったことの一部を実現できているのは、僕的にはありがたい話ですね」
安野さんがやりたいこととは何なのか。
“ライバル”と手を組んだAIエンジニア テクノロジーが行政を変える
それは一人でも多くの都民の意見を集めて、瞬時に分析し、政治に反映させることです。
都はこれまで数万の意見を分析する場合、数か月を要するケースがありましたが、「ブロードリスニング」というAIの技術を導入すれば、わずか数時間で処理できます。
都が安野さんに期待するのは、意見集約を大幅に向上させることです。
都が意見を集めてから1週間。SNSを通じ、2000ほどの意見が集まっていました。
安野さん(2024年11月の第2回打ち合わせより)
「今回はちょっと先の遠い未来っていうこともあって、比較的ポジティブな未来志向の意見が集まっている」
AIが似たような意見を一つのグループとして集め、自動的に色分けします。
都の職員
「本当に多様な、いろんな種類のものが出てきてるなと。それをAIでガッと集約をして分析するのは、我々職員ではなかなかできませんので」
さらに、都民から直接意見を集めようと動物園に。
都の職員(2024年12月)
「お子さんが大きくなったら、どんな東京になってほしいか」
アンケートには、さまざまな意見が寄せられました。
――今、どういう東京にしたいと書きましたか?
都民
「子どもがもっと過ごしやすいようにしてほしい」
「水族館とか動物園とかがたくさん増えてほしいです」
「やっぱり地震とか、不安がありますよね」
こうして集まった意見は約3万件。似たような意見が多ければ多いほど、そのグループの色の範囲が大きくなります。
AIによって処理された意見は、都の長期ビジョンの策定に反映されます。
今回の分析で浮かび上がったのが「子育て」というキーワード。
「子供を産んでも、楽に生活できるような社会になっていてほしい」
「地域全体で子どもを育てる・助け合う街」
そして…
東京都 小池百合子知事
「新たな戦略でありますけれども、子育て、若者、観光そして防災などの分野を新たに設けまして」
新たに「子育て」などを戦略の柱にすることを盛り込んだ、『2050年の都の長期ビジョン』が発表されました。
他にも、AIによって都民のさまざまな声を知ることができました。
安野さん(2024年12月)
「単なる多数決じゃないんだけれども、拾い上げられると良さそうな声を学ぶことができる」
一方、こうして集めた意見を政策に反映し、実行していくのは「AI」ではなく、「人」です。
安野さん
「AIだとできない判断っていうのはやっぱりある。例えば、この地域にとっては良いことかもしれないけれども、別の地域にはものすごく害があることだとすれば、それをやらない方がいいですし。視野を広く、視座を高くする。そのうえで総合的に意思決定する。これは人間の政治家にやっていただきたい」
市民の声を瞬時に分析 AIで“行政革命”起こせるか
上村彩子キャスター:
AIによって短縮できた時間をどれだけ活用していくか。人間同士のコミュニケーションにあてるということもできます。結局、AIをどう活かしていくかは人間次第な気がします。
喜入友浩キャスター:
そうなると、より人間が試される時代になってきます。この取り組みが東京都だけの取り組みで終わるのではなく、ここで得られた知見が全国に広がるといいなと思います。
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