第三者から提供された精子や卵子を使った不妊治療のルールを定める法案が国会に提出されたのを受け、きょう、当事者らが会見を行いました。訴えたのは、生まれてくる子どもの「出自を知る権利」についてです。
東京・中央区にあるクリニック。去年5月から運用しているのは「精子バンク」です。
プライベートケアクリニック東京 小堀善友 院長
「この中に精子のチューブが凍結保存されています」
日本では77年前に第三者の精子提供による人工授精が始まり、これまでに1万人以上が誕生したとされます。ただ、精子の提供者が誰なのかを子どもが知る、「出自を知る権利」について法的なルールはありません。提供者のプライバシーを守るためなどとして、ほとんどの精子提供が「匿名」で行われてきました。
一方、このクリニックでは、子どもが希望した場合に身元の分かる情報を開示できる提供者のみを募集しています。
不妊カウンセラー 伊藤ひろみさん
「(提供者の)名前や人柄などを知りたい、そして場合によっては会いたいと思っている方がそれなりにたくさん世界中にいらっしゃると知っていたので、非匿名の提供のみを実施することにしました。これまでに146名の方にドナー登録のお申し込みをいただきました」
今月、こうした第三者の精子や卵子による不妊治療に関する法案が、超党派の議連により国会に提出されました。
法案では、子どもは18歳になると提供者に関する情報を請求できます。しかし、一律で開示されるのは身長・血液型・年齢など個人が特定されない情報に限られ、名前などのより詳しい情報は、提供者の了承が得られなければ開示されないことになっています。
きょう会見を行った精子提供で生まれた当事者らは、この法案では不十分だと訴えます。
第三者の精子提供で生まれた 加藤英明さん
「身長だけ教えればいいのか、やはりそこは違うと思うんですよね。今回、かなり法律という前進はしたと思うが、子どもの声を聞いていただけてないと強く感じている」
登壇した石塚幸子さんは、23歳のときに精子提供で生まれたことを母親から知らされました。
第三者からの精子提供で生まれた 石塚幸子さん(45)
「(母親から)『誰の精子を使ったかはわからないからね』とその時言われました。自分って一体何者なのかなと、そういうことがやっぱり不安になる。そこには(精子という)モノではなく実際に存在する人がいて、その結果として自分がいるんだと確認させてほしい」
「出自を知る権利」が提供者側の判断に委ねられるのはおかしいと訴えます。
石塚幸子さん
「知りたいと思ったときに何をどこまで知りたいのかは子どもに決めさせてほしいし、それができて初めて、出自を知る権利を子どもが持っていると言えるんだと思います」
生まれてくる子どもの「出自を知る権利」をどう守っていくべきか、慎重な議論が求められています。
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