25日、東京地裁が旧統一教会に対して「解散命令」を下しました。この決定により、今後なにが変わっていくのでしょうか。記者が徹底解説します。
旧統一教会に解散命令 民事上の不法行為で「初」
小笠原亘キャスター:
25日、東京地裁が旧統一教会に対して下した「解散命令」。この決定により、今後なにが変わっていくのでしょうか。
まずは、これまでの経緯です。
▼2022年7月:安倍元総理が銃撃事件
逮捕された山上徹也被告は犯行の動機について「母親が旧統一教会に1億円超を献金した」と『旧統一教会への恨み』を明かしました。
▼2022年11月~:文科省が旧統一教会に「質問権」を行使し7回ヒアリング
▼2023年10月:文科省は東京地裁に旧統一教会への解散命令を請求
▼2024年2月~:東京地裁で4回に及ぶ「審問」が非公開で実施
▼2025年3月25日:東京地裁は、旧統一教会に解散命令を下しました。
「解散命令」とは、宗教法人法では「法令に違反して著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為」とされています。裁判所は宗教法人に対し強制的に解散させ、法人格を取り消す手続きを行うことができます。
これまで国が法令違反を根拠に解散命令を請求した例は2つあります。
地下鉄サリン事件などを起こした「オウム真理教」と、幹部らが霊視商法詐欺事件を起こした「明覚寺」です。どちらも刑事事件で立件されています。
今回の争点は、「法令違反」に民法上の不法行為を含むかという点でした。
文科省は、教団の不法行為を認めた民事裁判の判決が多数あり、「法令違反」と主張しました。一方、旧統一教会は、刑事事件には問われておらず、献金は宗教活動の一環であることから、「法令違反にはあたらない」と主張し、双方の主張は対立していました。
そして被害の規模は、文化庁の資料によると、被害者の数は約1550人、被害額は約204億円、平均して1人当たり約1300万円に上るということです。
旧統一教会の被害救済に取り組む、全国霊感商法対策弁護士連絡会の山口広弁護士は3月22日に「教団は被害について全く謝罪せず、形だけのコンプライアンス宣言を出した」と批判。今回の解散命令による幅広い被害回復に期待をするとしています。
ホラン千秋キャスター:
親が旧統一教会信者で大変な思いをし、「まだ、ここ(解散命令)は通過点だ」と話す人もいます。
元競泳日本代表 松田丈志さん:
今は通過点だと思いますし、今もなお苦しめられ続けてる方がいるのだと感じます。これだけの多くの被害者、大きな被害金額があるので、僕らの感覚からすると解散命令は当然だと思います。
井上貴博キャスター:
もちろん旧統一教会に対して、厳しく対応していただきたいと思います。それとともに、献金の上限額を法律で設定するとか、宗教団体であっても、収支報告書を全面的に公開することを義務付けるといった、抜本的な対策も併せてする必要性を感じます。
松田丈志さん:
他の宗教でも苦しんでいる方がいるのではないかと思ったりするので、対応していただきたいと思います。
「解散命令」が確定したらどうなるのか 今後の展開を記者が解説
井上キャスター:
ではここで、教団の今後について岸記者に聞きます。今回の解散命令によって、旧統一教会は今後どうなるのでしょうか?
岸克哉記者:
まず、解散命令が確定したあとの流れから説明します。
解散命令が確定すると、裁判所の監督のもと「清算手続き」が始まります。預金や不動産をはじめとする教団の財産がリストアップ・整理され、債務の弁済などにあてられます。
この「清算手続き」が終われば、旧統一教会は宗教法人格がはく奪され、▼礼拝施設などの固定資産税、▼宗教活動で得たお布施などの収入などで、税制上の優遇措置が受けられなくなります。
一方で、宗教法人格がなくなったとしても、教団側は「任意団体」として活動を続けることはできます。
ただ教団側は、今回の解散命令を「到底、承服できるものではない」としたうえで、「即時抗告を検討していく」としています。そうなれば、東京高裁で審理が行われ、その結果次第では最高裁までもつれることになります。
井上キャスター:
仮に最高裁まで争った場合、審理にはどのくらい時間がかかるのでしょうか?
岸克哉記者:
解散命令請求から確定までの期間について、過去に解散命令が出された2つの宗教法人の場合、それぞれ最高裁まで争われ、「オウム真理教」のケースは7か月、「明覚寺」では約3年かかりました。
旧統一教会をめぐる審理では国と主張が真っ向から対立し、25日の地裁の判断までに約1年半かかったことを考えると、解散命令の確定にはかなりの時間がかかることが見込まれます。
「高額献金」などの被害への弁済は
井上キャスター:
仮に解散命令が確定した場合、「高額献金」などの被害を訴える多くの人に、お金は返ってくるのでしょうか?
岸克哉記者:
「清算手続き」には、債務の弁済も含まれています。
高額献金の返還を求めたい人は、裁判所から選任され教団の財産を管理する「清算人」に被害を届け出て、それが認められれば、弁済の対象となります。ただ細かい献金記録などが必要となるため、こうした記録を持たずに被害を訴えるとなれば、教団側の協力が不可欠となります。
この手続きに対しては教団側の抵抗が想定されるため、被害を訴える人への弁済は不透明と言わざる得ないのが現状です。
井上キャスター:
集めた献金を隠して海外に持っていくことなどに対して、法的なアプローチができないという課題も残されています。
松田丈志さん:
やはり弁済へのハードルはかなり高そうだなと感じてしまいますね。
井上キャスター:
未だに教団としての被害者への謝罪なども行われていない現状があります。
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<プロフィール>
松田丈志さん
元競泳日本代表
五輪4大会出場 4個のメダル獲得
JOC理事 宮崎県出身 3児の父
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