E START

E START トップページ > ニュース > 海外 > 「アジアのトランプ」比・ドゥテルテ前大統領なぜ逮捕?背景に現職マルコス氏との確執…国内の“分断”加速か

「アジアのトランプ」比・ドゥテルテ前大統領なぜ逮捕?背景に現職マルコス氏との確執…国内の“分断”加速か

海外
2025-03-12 19:00

首都マニラの空港、移送先の空軍基地には多数の警察官 

11日早朝、フィリピンの首都マニラの空港はものものしい雰囲気となっていた。到着ゲートには多数の警察官が待機。集まった報道陣が待ち構えていたのは、滞在先の香港から帰国する前大統領のドゥテルテ氏だ。というのも、数日前からICC(国際刑事裁判所)がドゥテルテ氏に対し逮捕状を出したとの情報が広がっていたのだ。ドゥテルテ氏は香港で開かれたフィリピン人移民らの政治集会に参加していたが、当初は逮捕を免れるために逃亡したのではないか、との臆測も流れていた。


【写真を見る】「アジアのトランプ」比・ドゥテルテ前大統領なぜ逮捕?背景に現職マルコス氏との確執…国内の“分断”加速か


マニラに到着したドゥテルテ氏は報道陣の前に姿を見せず、そのまま空軍基地に連行された。そして、大統領府はまもなく「ドゥテルテ氏をICCの逮捕状に基づき逮捕した」と発表した。空軍基地の入り口は多くの警察官が配置されるなど、厳戒態勢となっていた。


ドゥテルテ氏の長女で副大統領のサラ氏は、ドゥテルテ氏がICCの本部があるオランダ・ハーグへ移送されると明らかにしており、今後の動向に大きな注目が集まっている。


“麻薬戦争”とは…3万人が殺害されたとの推計も

南部ミンダナオ島のダバオ市長を経て、2016年に大統領に就任したドゥテルテ氏は、公約である「麻薬犯罪の撲滅」を最優先課題に掲げていた。同年に行った演説では次のように述べている。


フィリピン・ドゥテルテ大統領(当時)
「麻薬戦争は今まさに起きている。私の任期の最後の日まで、密売人が路上からいなくなるまで、麻薬王が殺されるまで…この方針は続くだろう」


強力なリーダーシップで国民から高い支持を集める一方、数百万人の麻薬中毒者を「喜んで殺す」と発言するなど、過激な物言いがたびたび物議を醸した。アメリカ映画の主人公になぞらえ「フィリピンのダーティハリー」と呼ばれたほか、「アジアのトランプ」「暴言王」といった様々な異名をもっていた。


薬物の密売人らを殺害することも事実上容認され、警察官は路上にいた密売人を、十分な証拠も裁判もないままに、その場で射殺するケースが相次いだ。無実の市民が殺害されたとの報告もあった。また、警察だけでなく、自警団を名乗る正体不明の殺し屋集団も殺人に加わっていたとされている。“麻薬戦争”によってフィリピン政府は6000人あまりが死亡したと発表したが、人権団体などは犠牲者が3万人に上るとの推計も出している。 


ドゥテルテ氏の強引な取り締まりをめぐっては、薬物犯罪が深刻化していたフィリピンの治安改善につながったと評価する声もあがった一方、犠牲者の容疑者の家族らは「超法規的な殺人が人道に対する罪にあたる」として、ICCにドゥテルテ氏を告訴した。ICCが捜査を始めると、ドゥテルテ氏はこれに反発し、2019年にICCから脱退した。


なぜいま逮捕?背景にはマルコス大統領との確執

2018年にICCの予備調査が始まってから7年。“麻薬戦争”をめぐりドゥテルテ氏の逮捕に至った背景には、現職のマルコス大統領との確執がある。


そもそも、2022年の大統領選挙で両者は蜜月ぶりをアピールしていた。マルコス元大統領の長男フェルディナンド・マルコス・ジュニア氏が大統領に、ドゥテルテ前大統領の長女サラ・ドゥテルテ氏が副大統領となった。


しかし、マルコス大統領は中国寄りとされたドゥテルテ政権から外交路線を転換し、アメリカとの関係強化に舵を切った。こうした政策の違いなどにより、両氏の亀裂は徐々に広がり、2028年の大統領選挙を見据えた今年5月の中間選挙を前に、両家の主導権争いは激化している。


一部の現地メディアは、マルコス政権が“麻薬戦争”を攻撃材料に、ICCを利用してドゥテルテ氏への圧力を強め、その影響力を弱めようとしていると指摘した。マルコス大統領は、2019年に脱退したICCに再加盟する意思はないとしていたが、去年11月、ICCがICPO(国際刑事警察機構)を通じてドゥテルテ氏の逮捕を要請した場合、フィリピン政府として協力する姿勢を示していた。


副大統領のドゥテルテ氏長女は弾劾…中間選挙控え“分断”加速か

マルコス氏との対立を抱えるのは、ドゥテルテ氏だけではない。長女のサラ・ドゥテルテ氏は次期大統領選の有力候補とされているが、2024年11月、自分が殺された場合にマルコス大統領夫妻らを殺害するよう「殺し屋を雇った」と発言するなど、マルコス大統領との亀裂は決定的となった。サラ氏は2025年2月に機密費の不正使用などの疑いで議会下院から弾劾訴追されており、今後上院で開かれる弾劾裁判で罷免される可能性もある。


5月の中間選挙は上院の半数と下院、州知事らを一斉に選ぶもので、マルコス氏が優勢との見方もある。ただ、ドゥテルテ氏の逮捕を受けて、ドゥテルテ家の支持者らの反発が強まることは必至で、国内の分断と政局の混乱はさらに広がりそうだ。


スマホのバッテリーを長持ちさせるコツは?意外と知らない“スマホ充電の落とし穴”を専門家が解説【ひるおび】
「パクされて自撮りを…」少年が初めて明かした「子どもキャンプの性被害」 審議進む日本版DBS “性暴力は許さない”姿勢や対策“見える化”し共有を【news23】
【検証】「布団の上に毛布」が暖かい説 毛布は布団の「上」か「下」か 毛布の正しい使い方【Nスタ解説】


情報提供元:TBS NEWS DIG Powered by JNN

人気記事

ページの先頭へ