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アカデミー賞5冠『ANORA アノーラ』のショーン・ベイカー監督 「映画で偏見をなくしたい」少数者の声を届け続ける理由を小川彩佳キャスターが単独インタビュー【news23】

海外
2025-03-18 14:38

今年のアカデミー賞で5冠を達成した「ANORA アノーラ」も「格差」や「差別」をテーマとしています。監督賞を受賞したショーン・べイカー監督が「光のあたらない人々を描きつつける」ワケに迫ります。


【写真を見る】ベイカー監督が描く共通のテーマ作品


「偏見をなくすことに貢献したかった」 監督が少数者の声を届ける理由

映画「ANORA アノーラ」。ニューヨークで暮らすセックスワーカーのアノーラが、ロシア人の御曹司と恋に落ち、結婚。2人の恋をコメディーチックに映し、格差や差別に抗う主人公を描いた物語です。


アカデミー賞では「作品賞」を含む5部門を受賞し、そのうち4部門をショーン・ベーカー監督自身が獲得。ウォルト・ディズニー以来、71年ぶりの快挙を果たしました。 


小川彩佳キャスター
「監督賞を含むオスカー受賞、おめでとうございます。受賞後の気持ちは?」


映画『ANORA アノーラ』 ショーン・ベイカー監督
「本当に全てが予想外のことで、この映画がなにか賞を取る、人々の支持を得るには議論を呼ぶ、賛否が分かれると思った」


ベイカー監督の映画には共通するテーマがあります。


トランスジェンダーの娼婦の日常を描いた「タンジェリン」。夢の国ディズニー・ワールドのすぐそばに住む親子の貧困を子どもの目線で描いた「フロリダ・プロジェクト」。


描き続けるのは弱者やマイノリティー。社会の片隅に生きる人々の人生に光を当て、悲劇ではなく魅力的な人生として映し出してきました。


新作「ANORA アノーラ」では、セックスワーカーの主人公を通し、資本主義社会の中で搾取される人とそれに抗う姿を描きます。


御曹司とセックスワーカーの恋は、現実社会の格差を浮き彫りにします。


映画『ANORA アノーラ』 ショーン・ベイカー監督
「様々なテーマを模索する中で、そのうちの一つが『権力』でした。階層の中で、自分より下の立場の人間をどう扱うのか。私たちが生きている世界には、確かに経済的な格差がある。搾取される側か、搾取する側、どちらかです。私は声の届きにくい『社会の片隅にいる人々』に目を向けてきました」


小川彩佳キャスター
「彼女が歯を食いしばり、自分の尊厳を守るために闘う姿。自分の仕事に誇りを持つ姿がとても魅力的でした」


映画『ANORA アノーラ』 ショーン・ベイカー監督
「この作品は、アメリカの映画やテレビでセックスワーカーが十分に描かれてこなかったことへの反発なんです。最近のセックスワーカーの描かれ方は、かなり誇張されていたり、物語の道具として使われているように感じる。少しでもセックスワーカーの偏見をなくすことに貢献したかった」


映画を見た人は…


40代女性
「偏見だったり、ステレオタイプがいっぱいある中で、私たちに何ができるか」


30代女性
「女性の自尊心について考えさせられる。元気が出ました」


30代男性
「重いテーマの映画いろいろあるけど、受け入れられる時代になったのかな」


物語の終わりには、監督のある想いを込めました。


映画『ANORA アノーラ』  ショーン・ベイカー監督
「エンディングは観客をあえて現実に引き戻すような終わり方にした。もし本当の人生を描こうとするなら、リアルに感じられるようにしたかった。作品を通じて人々に考えてもらい、議論につながればいいと思う」


アメリカも“忖度社会”に…トランプ政権で加速する「分断」

小川彩佳キャスター:
作品が描くのは、社会的な脆弱さだけが切り取られて伝えられがちな立場の人たちだと思うんですが、そうした人たちを堂々と、観客と地続きの1人の人間として敬意を持って描いているというところに、この作品の強さがあると感じました。


藤森さんは作品をご覧になったんですよね。


藤森祥平キャスター:
監督が話していた通り、ラストはみんながそれぞれを考えさせられるようなシーンでしたし、出演者の優しさや希望も見えましたが、無情さや虚しさも伝わってきました。


何を感じるかは人それぞれだというような作品でした。


小川キャスター:
監督は現代に色々なメッセージを込めたんじゃないかなと思います。


ベイカー監督は、「『社会の片隅にいる人々』を描いてきた」と話していましたが、実は、インディーズ映画の担い手だったんです。


その監督の作品が、大メジャーであるアカデミー賞の作品賞や監督賞を受賞したというのは、今のアメリカ社会、トランプ政権下で揺らぐ多様性の危機とも無関係ではないのではないかと私は思います。


こうした作品に込められた思いや受賞の快挙というのが、本当に苦しい立場にいる人たちの連帯、そして、支えのメッセージとしても響いていくのではないかなと感じました。


藤森キャスター:
先々週にアカデミー賞の受賞がありましたが、一方で、アメリカ社会は分断がさらに進んでる気がします。


TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん:
この映画とは少し別の話なんですが、私の友人が最近アメリカに行って文化関係のシンポジウムに出席したそうです。


そしたら、シンポジウムが始まる前に主催者から、「多様性やLGBTなどの話はしないでくれ」という要請があり、出席者たちは「しょうがないな」と受け入れたそうです。


アメリカでさえ、多様性などに対する忖度が進んでいるということに友人は「驚いた」と言っていました。


ですが、一方で非常に激しい反対の動きも出ているので、まさに社会が分断の傾向を強めているということだと思います。


藤森キャスター:
変化が目に見えて分かるということは、今後、ますます広がっていくのではないかという懸念があります。


小川キャスター:
一方で、トランプ大統領に期待する声というのも、依然大きいですからね。


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<プロフィール>
星 浩さん
TBSスペシャルコメンテーター
1955年生まれ 福島県出身
政治記者歴30年


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情報提供元:TBS NEWS DIG Powered by JNN

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