18週ぶりに値下がりしたコメの価格。農水省は「備蓄米の流通が価格を押し下げた」としていますが、このまま消費者が手に取りやすい水準まで下げていくことは出来るのでしょうか。
農水省幹部「こんなのは下がったうちに入らない」 備蓄米の流通状況は
高柳光希キャスター:
コメの価格は、2025年1月3571円でしたが、4か月近く上がりつづけ、19円下がったものの、4月28日~5月4日は4214円という価格になっています。
※(株)KSP-SPが提供するPOSデータに基づき農林水産省にて作成
これについて農水省は「割安な備蓄米の流通が進み、平均価格を押し下げた」としています。
「ようやく価格が下がった」と思う人もいれば、「まだ19円しか下がっていない」と思う人もいると思います。気になるのは、これからコメの価格が下がっていくのかどうかです。
TBS経済部 田中優衣 記者:
ようやく備蓄米の効果が出始めたかもしれませんが、見通しはそう甘くないかもしれません。
農水省の幹部は「(コメ価格が)下がったのは良かったけれど、今後も下がるかは見通せない」「こんなのは下がったうちに入らない。まだ高止まりが続きそうだ」としています。
高柳キャスター:
そして、5月8日時点での備蓄米の流通状況についてです。
※第1回・2回入札の落札分
JA全農は放出されている備蓄米の約94%、19万9270トンを落札しています。そのうち、現時点で、約32%しか卸売業者に渡っていないようです。
TBS経済部 田中優衣 記者:
小売業者まで渡っているのは、それよりももっと少ないということになります。
JA全農が落札した備蓄米は、卸売業者とすべて契約済みですが、小売業者への流通まで至っていないのが現状です。
高柳キャスター:
さらにJA全農の広報は、「卸売業者の精米能力に応じて順次出荷しているため、落札した備蓄米を一気に出すことは難しい」といいます。
TBS経済部 田中優衣 記者:
(農水省は)備蓄米を放出しても、実際に消費者のもとに全然届いていないという危機感があるようです。
2週間ほど前、JA全農の幹部を農水省に呼び、流通を速やかに行うよう要請したことに加え、今後の備蓄米の入札時に、卸売・小売に対する流通を早くできないかについて、検討しているみたいです。
精米能力を上げる手立ては?
井上貴博キャスター:
今は備蓄米を放出することしか打つ手がないのだと思いますが、根本的な部分を考えると、これまで政府が生産調整をして、価格をコントロールしてきた政策の限界が来ているのではないかと感じます。
例えば、輸入米を入れて、国内の生産者との競争を促すなど、抜本的な政策転換をしないと、根本的な解決にはならないのではないかと思います。
実業家・インフルエンサー 岸谷蘭丸さん:
おそらく少子高齢化の影響もあり、団塊の世代は農業・飲食業にとっては相当大きい人材・労働力だったと思います。その世代が次第にいなくなっていき、農業をやる人たちが減ってきてしまったことは、大きい気がします。
そして、今後もつきまとう問題であり、どう解決していくのか考えるきっかけだと思います。
出水麻衣キャスター:
抜本的な改革には時間も要するので、今できることとして、補助金などを出して機械などを購入し、精米能力を上げるといった手立ては難しいのでしょうか。
TBS経済部 田中優衣 記者:
備蓄米以外のコメの精米のスケジュールも入っていたり、他の契約の調整に時間がかかったりしている中で、追いついていないのではないかという声は聞こえてきます。
岸谷蘭丸さん:
消費者の手元に届くのかという点も、難しいところですよね。
例えば、コンビニが「おにぎりを作るのをやめます」ということにはならないので、がっつりと抑えている業者がいる以上、結局消費者に届く量は、すごく少ないとも聞きます。
どれだけ“その辺で買えるおコメ”の値段が下がるのか、その反映にはすごく時間がかかるのもポイントですよね。
専門家「6月末までに4000円を切るかどうか、また値上がりする可能性も」
TBS経済部 田中優衣 記者:
政府は夏まで備蓄米をコンスタントに放出するとしていますが、現在の「原則1年以内に、同じ品質・量を買い戻す」という備蓄米を売り渡す条件を、今後緩和するのではないかという話もあがっています。
実際、入札に参加できる業者は数十社ほどですが、集荷業者によると「戻すコメを確保できるか不透明」とも話していて、備蓄米の入札に参加しない業者があります。
高柳キャスター:
この入札条件の緩和により、消費者の手元に早く届くメリットがある一方で、入札価格が上がる可能性があるというデメリットもあります。
流通経済研究所の折笠俊輔主席研究員によると、「順調に値下がりしても、6月末までに4000円を切るかどうか、また値上がりする可能性もある」といいます。
井上キャスター:
すべてが後手後手なので、そもそも「備蓄米とは何か」というものを考えると、これほど消費者に届くまでに時間がかかるのは意味がないのではないかと感じてしまいます。毎年、同じようなことになる気もします。
岸谷蘭丸さん:
カリフォルニア米という話題も出ましたが、早く消費者に渡せる手段を確保しておくべきだと思います。
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<プロフィール>
岸谷蘭丸さん
イタリア名門ボッコーニ大学在学 23歳
岸谷五朗と岸谷香の長男
海外大受験塾「MMBH」設立
教育・多様性などについて発信
田中優衣
TBS報道局経済部 農水省担当
食品・飲料業界なども取材
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