
トヨタが建設していた未来のための実験都市がオープンした。異業種の企業も数多く参加している「ウーブン・シティ」プロジェクトの狙いは何なのか?
【写真で見る】“溶け込む自販機”や“地下の物流専用ルート”…「私有地」ならではの実験都市の狙いとは?
「異業種参加」どんな実験を?
25日、静岡県裾野市にある実験都市「ウーブン・シティ」がついに始動ー。
開業したのは、全体の約6分の1にあたる第1期エリア。広さ4万7000㎡の敷地に住居8棟を含む14棟の建物が建ち並び、トヨタの社員ら数世帯が暮らし始めた。
『ウーブン・バイ・トヨタ』シニア・バイス・プレジデント 豊田大輔さん:
「Inventor(発明家)に関しては、トヨタグループ企業12社に加えて7社が決まっている。各社の強みとトヨタの強みを“カケザン”して、今より良い未来をお届けしていきたい」
キーワードは「カケザン」。
▼お互いに持っている強みを“掛け合わせる”ことで新たに価値が生まれる
▼移動の提供だけではなく、人の心を動かすモビリティ。“人の心と心を繋ぐような価値を提供”
トヨタグループ12社と7つの企業が、自動運転やロボット、社会インフラなどの実証実験を進めていく。
例えば、カーシェアリングの車を利用者のもとまで届けるというサービス。
自動運転ロボットがシェアカーを先導し、動かし方や加減速、曲がり方の指令出し、シェアカーがその通りに動くというものだ。
他にも、飲料水メーカー『ダイドードリンコ』が開発したのは、新発想の自動販売機。
“壁に溶け込んだ”真っ白な自販機で、商品サンプルやボタン、コインの投入口は無く、壁に商品の取り出し口だけが見えているだけ。
スマホなど端末上で商品を選択し、キャッシュレス決済で購入するというもの。
担当者:
「オフィスの執務室やショールームなど、自販機が置けない場所にも置けるデザインはないかと突き詰めたところ、何もない“溶けこむ”デザインを開発した」
実証実験は他にも
▼【テストコース】⇒モビリティと連動して信号機を制御するなど社会インフラと連動する実証
▼【地下の物流専用ルート】⇒自動物流ロボットが荷物を運び、エレベーターに乗って各家庭へ
▼【居住区や実証店舗】⇒住民からリアルなフィードバック
などがある。
「ウーブン・シティ」の構想を推し進めてきた、トヨタの豊田章男会長も開業イベントで強調したのが“カケザン”だ。
『トヨタ自動車』豊田章男会長:
「ウーブン・シティで起こしていくのは“カケザン”です。ただ1をかけても大きくならない。1じゃダメなんです。だけど2でいいんです。最初の一歩を一緒に踏み出していただいたのは7社の皆さんです。7回2をかけるといくつになるでしょう。128です」
今後はさらに参加企業を増やし、最終的には2000人規模の都市を目指すという。
狙いは「売り切り型」からの転換
実験都市「ウーブン・シティ」に秘められた、トヨタの狙いは何なのか?
自動車アナリストの中西さんは、ウーブン・シティに参加する企業を「発明家」(Inventors)と呼んでいることに着目している。
ナカニシ自動車産業リサーチ 代表アナリスト中西孝樹さん:
「新しいものを発明するのは本当にゼロから何かがバッと出てくる。従来の車、あるいは例えば缶コーヒーなどの製品の価値観の殻に籠もらない。その殻を破って、新しいものを生み出そうとしている」
トヨタが目指すモビリティ・カンパニーとその狙いとはー。
中西さん:
「車というものが常時、通信で社会のインフラと繋がる“コネクテッドカー”になること。コネクティッドカーが繋がった先にバリューチェーン(価値が生まれる連鎖)を広げていく。そういった“バリューチェーンで儲けていく”会社がモビリティカンパニー」
これまでの「売り切り型」、“車を売った後に繋がらない”スタイルからの転換だという。
中西さん:
「売り切り型から“保有ベースで稼ぐ会社に変わる”。こういうビジネスモデルに転換することが、トヨタにとっての“モビリティカンパニー”へのモデルチェンジ」
そして中西さんは、ウーブン・シティがトヨタの私有地であることが新たな「メリット」を生むと指摘する。
中西さん:
「人口構成を考えると、日本は若い人より年を取っている人が圧倒的に多い。ウーブン・シティの中に限ってみれば、すごく若くてエネルギッシュで、いろんなことに変化を求めるような人へ人口構成を振ることができる。私有地ゆえに自分たちが選んだ人たちのみが住めるような、“ある意味民主主義ではない”。そういうところだからこそ“中国的なイノベーションを早く起こせる可能性”がある」
「失敗を恐れずスピード感」が重要
中国的なイノベーション-。
この点は、中国経済に詳しい柯隆さんも同意見だ。
――中国ではこういう実験都市だったり、社会実装の時にもう少しテンポが速い
『東京財団』主席研究員 柯隆さん:
「少しではなくずいぶん速い。なぜかというと、失敗を恐れないから。例えば自動運転はたくさん事故が起きていて、巻き込まれてけが人も出ている。AIがうまくいかなくて車が山から落ちたりというのもたくさんあった。それでも進めるスピリットは僕は間違っていないと思う。ただ中国の場合はもう少し慎重に、日本はもう少し大胆に。日中を足して2で割るぐらいがいい」
そういう意味でも、ウーブン・シティの意義は大きく「待ちに待った実験」だという。
柯隆さん:
「日本は新しい実験をやる時に、やはり失敗を恐れるケースが多い。なので、私有地限定でやりだしたのがとても良かったと思う。ただ、薬の開発に例えればこれは臨床試験みたいなもの。将来的に一般の社会へ広げていこうとなった時には、また新たな問題が出てくると思う。それでも最後は失敗を恐れずにどんどんどんどん進めて、しかもスピード感が重要だと思う。日本はちょっと世界に比べると遅れてる部分があるので、もっと早くやってほしいと思う」
(BS-TBS『Bizスクエア』2025年9月27日放送より)
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