
「家計への恩恵は思っている以上に少ない」との指摘も上がる食品の消費税減税。金融市場では財政悪化への懸念も強まり長期金利が急騰。日銀に打つ手はあるのか?
【写真を見る】消費税減税でも「買う値段は安くならない」ワケとは?減税公約で長期金利は急騰【Bizスクエア】
「減税よりも給料上げて」の声も
2月8日投開票の衆議院選挙での争点のひとつが「消費税の減税」だ。
<各党の消費税に関する公約>
【自民】【維新】⇒2年間限定で「食料品ゼロ」実現に向けた討論加速
【中道】⇒恒久的に「食料品ゼロ」
【国民】⇒賃金上昇率が安定するまで「一律5%」
【れいわ】⇒廃止
【共産】⇒「一律5%」将来的に「廃止」
【参政】⇒段階的に「廃止」
【保守】⇒恒久的に「食料品ゼロ」
【社民】⇒「一律ゼロ」
【みらい】⇒「現状維持」
多くの政党が食料品にかかる消費税について、ゼロにすることや税率を下げることを公約にかかげているが、有権者からはー
▼70代女性
「本当は消費税ゼロにしてもらいたいけど、ただやりますやりますで“本当にやってくれるのかな”と思う」
▼40代女性
「減税より“給料上げて欲しい”。手取りのお金さえ上げてもらえれば、もちろん税だってちゃんと払うので」
▼20代男性
「財政状況とかがよろしくないので、基本的には“安易に減税をするのはどうなのかなと”」
また、食料品の消費税減税の対象から外れるとみられている飲食店からは、“外食控え”を懸念する声も聞かれる。
『ビストロ グラヴィ』オーナーシェフ・島 五輝さん:
「軽減税率が0%、例えばテイクアウトが0%になると、みんなコンビニで買ってとなってしまう気がする。近々ランチを始めようか…という矢先のこのニュースで、お弁当屋さんの方がいいんじゃないかって」
減税しても「買う値段は安くならない」
消費税減税は、物価高対策として効果はあるのかー
物価の実証研究の第一人者でもある渡辺努さんは、「リーマンショックやコロナ禍で消費税減税を実施したヨーロッパのデータを見ると、何が起こるかが見えてくる」と話す。
『東京大学』名誉教授 渡辺努さん:
「例えば消費税10%を減税したとする。多くの人は『10%減税すれば、その分自分たちが買う値段が安くなる』と想定するが、“そうはならない”というのが驚くべきこと。要は“課税前の価格を上げる”ということが起きたのがヨーロッパの経験。10%減税したとしても、5%分ぐらいしか私達のところには入ってこない。売り手の方に残りの5%がいっちゃうということが起きる」
――税を上げるときには価格転嫁をしようという動きが強まるが、下げるときにも価格を転嫁する。
渡辺さん:
「今は円安などで価格転嫁が不十分なので、企業としては価格を上げたい気持ちは常々ある。なので私は消費税減税を実行したとしても、皆さんが考えるような効果が出てこないのではと懸念している。もっと言うと、今本当に必要なことは物価を下げる事ではない。『給料を上げて欲しい』という声もあったが、まさに賃金が安すぎることが問題。物価高ではなくて賃金安に焦点を当てるべきだ」
財政悪化懸念で「長期金利上昇」
消費税減税による財政悪化の懸念から債券売りも加速。20日、長期金利の代表的な指標である「10年物国債の利回り」は、一時2.380%と27年ぶりの高い水準に達した。
この長期金利の上昇について日銀の植田総裁はー
『日本銀行』植田和男総裁(23日):
「長期金利は、認識としてはかなり速いスピードで上昇してきている。私どもとしては政府が中長期的な財政健全化について“市場の信認を確保することは極めて重要であると考えている”」
植田総裁は長期金利の上昇を抑えるために日銀が国債を買い入れるオペレーションの可能性にも言及したが、日銀ウォッチャーの加藤出さんは「そう簡単に発動されることはない」という。
なぜ日銀は“買いオペ”に踏み出せないのかー
『東短リサーチ』加藤 出さん:
「長期金利上昇の原因が政府の財政の先行きに不安があることだとすると、中央銀行が国債を大規模に買い取っても一時的には収まることはあっても、マーケットが日銀の国債買いオペは『結局お金を刷って財政赤字を支えるわけですか』と受け止めてしまうと、通貨安が止まらなくなる。なので簡単に発動されることはないと思う」
また、23日の金融政策決定会合では、政策金利を現在の0.75%で据え置くことに決定したが、次の利上げのタイミングはー
加藤さん:
「年が明けてから円安が随分進み、またベッセント米財務長官が、要は『日銀の金利が低すぎるから円安になっている』と言っている。日本政府が為替介入しなければならないような円安圧力が今後続く場合は、もう少し利上げしたらとベッセント財務長官は何度も言ってくるだろうから、前倒しに利上げがあって、今は“4月の可能性は十分あるだろう”と思っている」
物価の見通し「日銀は判断を変えてきている」
では、利上げ判断に関係する「物価の見通し」はどうなのかー
『日本銀行』植田和男総裁(23日):
「しばらくヘッドライン(総合指数)は、“インフレ率がはっきりと低下を続ける”。2を下回っていく可能性が高い。これに対して基調的な物価のインフレ率は、ゆっくりとだが上がり続けていくとみている」
23日、日銀が公表した経済・物価の見通し「展望レポート」では、26年度の生鮮食品を除いた消費者物価の上昇率の見通しを1.9%に、エネルギーも除いた指数は2.2%に引き上げている。
【日銀展望レポート(1月)】※前年度比・()は10月時点の見通し
▼消費者物価指数(除く生鮮食品)
(25年度)2.7%(2.7)⇒(26年度)★1.9%(1.8)⇒(27年度)2.0%(2.0)
▼消費者物価指数(除く生鮮食品・エネルギー)
(25年度)3.0%(2.8)⇒(26年度)★2.2%(2.0)⇒(27年度)2.1%(2.0)
『東京大学』名誉教授 渡辺努さん:
「植田総裁の言う“基調的な物価”というのは、消費者物価指数(除く生鮮食品・エネルギー)だと思うが、それは25、26、27年度といずれも上振れさせてきている。元々日銀は、特に除く生鮮・エネルギーでも緩やかに物価が下がって2%を切っていくと考えていたが、今回の数字を見る限りでは、そうはならないと判断を変えてきてるのかなと」
――既に2%の物価目標は達成したと考えてもよいのではと素人的には見える。
渡辺さん:
「日銀がこういう見方をしている以上は、基調的に2%を超えてるように見える。決定会合でも委員がそれを理由に利上げしてもいいのではと提案をしたと聞いているが、私は意味がある提案で妥当性があると思う」
利上げしても円安の“悪循環”
植田総裁は長期金利の上昇を「かなり速いスピード」と警戒していたが、渡辺さんも、長期金利上昇の“悪循環”が生まれる可能性を危惧している。
<長期金利上昇の悪循環>
インフレ上昇⇒日銀は利上げ⇒国が支払う借金の利息、利払い費が増加⇒利払い費をまかなうためさらに借金が増える⇒財政への信認が低下しさらに通貨安が進む⇒インフレ上昇…
渡辺さん:
「政府債務が増加すると、健全な政府であれば少し税収を増やすとか歳出カットなどの努力を始める。ただ、規律のない政府だと政府債務の増加が放置されてしまう。そして国債が売られ、あるいは通貨も同時に売られる。通貨が売られるとインフレがさらに加速するので、また日銀は利上げをしなければいけない。まさにスパイラルで、インフレ、利上げが次々と来てしまう。その元凶はどこにあるかというと、規律がないところ」
――つまり新興国型になってしまうということか。一番怖いのは、通貨安を止めようと利上げをしても下落が止まらないという循環だ
渡辺さん:
「例えば80年代のブラジルは、これにかなり似たことが起きたと言われている。まさに新興国で起きる典型的な現象の一つだが、残念ながらもしかするとそれが日本でも起きている、あるいは先々起きる可能性があるのではと思う。多くの人は『利上げをすれば円安が止まるだろう』と思っているが、逆に悪循環のロジックでは、『利上げしてしまうと政府債務が増えるので、さらに通貨が下落する』、そのルートがあるということを意味している」
その上で、渡辺さんは選挙後に誕生する新政権への日銀の向き合い方に注目する。
渡辺さん:
「新政権も規律がないとなった場合に、日銀が今までと同じペースで金利を上げていいのかという問題がある。日銀が自分の政策をやりやすくするためには、新政権に対して『もっとしっかり規律を持ってくれ』というメッセージを出して欲しいし、出すのではと思っている」
(BS-TBS『Bizスクエア』 2026年1月24日放送より)
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