戦闘終結に向けた探り合いが続く中東情勢。あらゆるものの価格が上がるなか、意外な食品にも影響が出ています。
中東情勢が招く値上げ 食品の価格影響は「1年のタイムラグ」
高柳光希キャスター:
中東情勢によって様々な食品の価格に影響が出ています。
これから食用油、納豆、パンなどの値上げが予定されています。容器や包装紙など、石油由来のプラスチック製品の高騰が影響しているものが多いですが、実は他にも理由があります。
植物由来の油の場合、食用油として使われる一方、飛行機や車などのエンジンにも使うバイオ燃料にもなります。中東情勢の影響で原油価格が上がっている今、世界中で「植物から燃料(バイオ燃料)を作ろう」という動きが加速しています。原油の供給が減っている今、奪い合いになるかもしれません。
TBS報道局・経済部 農水省担当 和泉砂絵記者:
食用油は大豆や菜種からできていますが、バイオ燃料として使うこともできます。
そもそもの原油の量が全世界的に少なくなってきている状況の中、原油で使っていたものをバイオ燃料に切り替えていこうという動きが進んでいます。需要があるのに供給が足りない、需給が逼迫した状況がいま起きていて、これが食用油の値上げにも関わっています。
多くの食品が中東情勢の影響を受けている中、戦闘終結に向けた協議も進んでいます。しかし、交渉が妥結したとしても、食品の値上げがすぐに収まる訳ではありません。
日本総研の研究員・栂野裕貴氏の指摘によると、食品の価格上昇には約1年のタイムラグがあるとのことです。原油の価格高騰から、その素材、資材、そして食品へと反映されるまで1年ぐらいの時間がかかるということです。そのため、「仮に戦闘終結の合意があってもすぐには収束しない」と言われています。
肥料やエサを直撃する中東情勢の波及効果 魚や玉ねぎまで?
高柳キャスター:
価格が落ち着くまで時間がかかるといわれていますが、他にも影響が出るとされています。
それが魚です。漁業関係者によりますと、燃油高で漁に出られないと漁を控える漁師もいて、このような状況が魚の価格にも影響しうると言われています。実際、養殖業のエサ(魚粉)になる小魚の価格も高騰しているとのことです。
和泉記者:
既に、小魚の高騰には影響が出始めています。日本は南米・ペルーや中東・オマーンからエサとなる小魚を輸入しています。特に中東・オマーンではホルムズ海峡が止まった状態のため、運輸にかかるコストが非常に高い状況で、小魚の値段に影響しています。
アジアの地域でも小魚(カタクチイワシ)は獲れますが、原油高の影響でなかなか漁に出られず漁獲量が7~8割ほど減少してしまっている現状です。このような状況が重なり、魚粉として使う小魚の価格が高くなっています。
大手商社「兼松」によると、エサ(魚粉)の輸入価格は2か月で約13%も高騰したとのことです。
高柳キャスター:
さらに、身近な野菜・玉ねぎも、今後の値段に注意が必要です。
そもそも玉ねぎを作るコストの半分は生産費で、肥料代が全体の1割ほどを占めています。
和泉記者:
肥料代も上がっていくとみられます。肥料を作るには「天然ガス」が必要です。天然ガスは中東で多く生産されているため、供給量の面でも中東情勢の緊迫化が大きく影響してきます。
実際、輸入価格は既に戦闘前と比べて約2割ほど値上がりしている状況です。
高柳キャスター:
中東情勢で原油価格の高騰が印象的ですが、そこから波及して様々な影響が出ているということです。
「天災ではなく人災」 中東情勢が招く、終わらない物価高の連鎖
井上キャスター:
イラン情勢を巡っては、予定されている米中首脳会談で停戦が決まったとしても、1年2年ぐらいのスパンで物の値段が上がっていく。
毎日のようにニュースで「物価高」だと報道されていますが、今出ている現象は過去の事象が影響しています。そうなると、今のイラン情勢は未来に影響していく訳ですが、それをどのようにリスクを回避していくかが難しいと思います。
組織開発コンサルタント・著作家 勅使川原真衣さん:
ただ、生きたいだけなんですけどね。ただ生きることが、こんなに難しいのかなと思います。改めて、社会は連関し合うシステムでできていると感じさせられます。これは天災ではなく、人災に近いような被害ですから、やるせないと思う部分もあります。
個人的には、子どもたちの給食費の値上がりも結構気になっています。魚とかいっぱい食べさせてあげたいですが、大丈夫かなと心配です。
高柳キャスター:
消費者ももちろん影響を実感していますが、一番大変なのは、農家や漁師など一次産業に携わる人たちかもしれません。
加工食品の場合、企業が価格を決めるので、コストを踏まえて値上げすることができます。一方で、魚や野菜など生鮮食品に関しては、農協などを通して市場価格が決まるため、勝手に値上げすることができません。
井上キャスター:
これまで個人の防衛について話してきましたが、組織の防衛について感じることはありますか。
組織開発コンサルタント・著作家 勅使川原さん:
今回の問題は、企業努力次第でなんとかなる問題ではないので、できることは本当に少ないと思います。強いて言うなら、武器を買うことにお金を使うなら、生きるための直接的なお金に回して欲しいと感じています。
高柳キャスター:
政府としては、今後どのような対策をとっていくのでしょうか?
和泉記者:
一次産業に携わる方々への支援として、農水省幹部は「肥料代補助などに踏み切る可能性があるが、官邸のGOサインが必要。今は“頭の体操”段階」だとしています。
その際、補正予算の編成なども必要になってきますが、高市総理は4日、「補正予算の編成がすぐに必要な状況とは考えていない」と話しています。
今後、どういった対策がとられていくのかは、不透明な状況です。
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<プロフィール>
和泉砂絵
TBS報道局経済部 農水省担当
北海道出身 地元の魚とホタテが大好物
勅使川原真衣さん
組織開発コンサルタント・著作家 2児の母
著書に『働くということ「能力主義」を超えて』など
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