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怒号が飛び交う「再審制度」見直し…“袴田さんの58年” 審理の長期化の一因に「検察の抗告」激論の出口は?【news23】

国内
2026-05-08 15:32

「有罪」とされた人が「無実」を訴え、裁判のやり直しを求める再審制度。この見直しの議論が紛糾しています。自民党の議員が法務省の法案に反発し、7日の会合でも結論は出ませんでした。「開かずの扉」と言われる再審の制度は変わるのでしょうか。


【写真で見る】“稲田の乱” 「再審」制度に対する主張


“稲田の乱”で注目「再審見直し」

喜入友浩キャスター
「稲田議員が部屋へと向かっていきます。かなり緊張感のある表情です」

7日午後、自民党本部で行われた部会に合わせ、続々と集まった議員たち。
  
喜入キャスター
「まもなく会が始まり、冒頭だけ報道陣が入れるということです。多くの報道陣が集まっています」

報道陣の数からも、その注目の高さが伺えます。


議論されているのは、政府が今国会への提出を目指している「再審」制度の改正案についてです。

この改正案に注目が集まったのは4月6日のこと。冒頭の撮影が終わり、マスコミに退出が促されたその時…


自民党 稲田朋美 元政調会長
「マスコミが退出するまでに、私一言、言わせてもらいたい。何も1ミリも私たちが言うことを聞かない」

“稲田の乱”とも呼ばれたこの一幕。なぜ、ここまで議論は紛糾しているのでしょうか?


無罪確定まで58年…なぜ長期化?

そもそも「再審」とは、有罪が確定した後で冤罪の可能性が出てきた場合に、裁判をやり直すことです。
 
これまでに日弁連が支援した再審事件は20件で無罪が確定しています。

その制度の見直しの切っ掛けとなったのが…


袴田巖さんの姉 袴田ひで子さん
「『無罪です』って裁判長さんが言った。だからもう裁判所は行かない」


1966年に静岡県で一家4人が殺害された事件で死刑判決を受けた袴田巖さん。その後、2024年に再審で無罪が確定しました。

袴田さんの場合、静岡地裁が再審開始を決定したのは2014年のこと。しかし、実際に再審公判が始まったのは9年後で、「審理の長期化」を問題視する声があがってきたのです。

袴田さんの姉・ひで子さんは…


袴田ひで子さん(今月3日)
「私の33歳の出来事。91歳で無罪が確定した。この58年、国は何をしていたんでしょう。そんな法律は即改正していただきたい」


なぜ、これほど長い時間を要するのか?今の制度では地裁が再審開始を決定しても検察が抗告、つまり裁判所の決定に不服を申し立てることが認められています。

その後、高裁が再審を支持しても検察が再び抗告すれば、最高裁の判断を経てようやく「やり直しの裁判」が始まることになります。

そのため、自民党内からは検察官抗告が「審理の長期化」に繋がっているとして、「全面禁止」を求める声があがっていましたが…


怒号飛び交い…「抗告」めぐり対立

稲田朋美 元政調会長
「ほとんどの議員が抗告禁止って言っているにもかかわらず、それを全く無視している」

法務省側の当初の改正案に「抗告禁止」は盛り込まれていませんでした。

その後、法務省は修正案を提示しましたが、そこにも「抗告」は残ったまま。


法務省は「元の確定判決の重みが失われ、刑事裁判の在り方のバランスが崩れる」などと主張していて、議論は平行線をたどっていました。


「抗告の原則禁止」も相次ぐ異論

そして迎えた7日…

喜入キャスター
「記者が耳をそば立てていますが、時折、怒号のような声も聞こえてきます。議論は3時間以上続いています」

法務省が示したのは検察官抗告を「原則禁止」とする修正案でした。


ただ、▼十分な理由がある場合は検察官の抗告を例外的に認めることや、▼「原則禁止」が法律本体の「本則」ではなく“補足や特例事項など”を記す「付則」に加えられたことに、反発の声もあがりました。


自民党 鈴木貴子 議員
「“十分な理由”というものを誰が判断するのかという質問に対して、「検察です」という答弁でした。それでは運用として、これまでと何ら変わりがないのではないか」


自民党 井出庸生 議員
「例外が大きすぎるようであれば、それは原則禁止とは言えない。努力規定ではなく根拠規定にしなきゃいけない。だから『本則」化が絶対必要」

また部会終了後、news23の取材に応じた稲田朋美元政調会長は、法務省の姿勢について…


稲田朋美 元政調会長
「検察の利益の代弁者に徹している姿勢が非常に問題だなと。冤罪被害者の側にどうして立てないのだろうと思いました」

その上で、今の改正案では、「審理の長期化」を防ぐ形になっていないと危惧します。

稲田朋美 元政調会長
「袴田さんが事件から60年の間、死刑囚であり続けたのは、死刑制度を持っている日本としてはあってはならないことなのでここを変える。その最初の一歩が違っている」


議論紛糾…検察のホンネは?

小川彩佳キャスター:
議論はなぜここまで紛糾するのでしょうか。自民党側が何度も修正案を求めるという異例な展開になっていますが、検察側としてはそもそも何がネックになっているのでしょうか。


弁護士 若狭勝さん:
まず前提として、冤罪は最もあってはならないと思います。私は冤罪を防ぐために検事になったので、冤罪の問題には非常に思い入れがあります。

ただ一方で、大きく言えるのは「有罪確定判決」の重みです。有罪確定判決には11人ほどの裁判官が審理に関与しています。その重みがあるので、あまりにも手続き的に簡単に再審を認めると、有罪確定判決の重みが揺らぎ、そうすれば司法の信頼が揺らいでしまうと検察は一番考えていると思います。


藤森祥平キャスター:
現在の再審制度は、地裁が再審開始を決定し、検察側が抗告、不服を申し立てると、高裁で再審を検討し、高裁が再審を支持した場合はもう1度検察側が特別抗告できます。その過程を経て最高裁まで進むため、時間がかかり、袴田さんの場合は最終的に再審が決まるまでに9年もかかってしまいました。

そのため、検察の抗告を「全面禁止」しようという議論が始まりましたが、法務省側が出した見解は「原則禁止」でした。


▼現在の再審制度
地裁 再審開始を決定→(抗告)→高裁 再審を支持→(抗告)→最高裁 再審を支持→(確定)→再審(裁判やり直し)

▼修正案
地裁 再審開始を決定→再審(裁判やり直し)

検察が例外規定を乗せるところにこだわっているのはなぜなのでしょうか。

弁護士 若狭さん:
有罪確定判決の重みがあるので、慎重に再審開始決定に臨まなくてはいけないと思います。しかし、袴田事件はあってはならないと思っていて、長期に渡るのは大問題なので、今までのやり方には問題があると思います。

結論からいうと、抗告は1回限りで認めて、そして高裁における審議の期間を1年程度に限定するのがいいと思います。確定判決の重みと、冤罪にかかった人を早期に救うこととのバランスがいいと思います。


小川彩佳キャスター:
素朴な疑問としては、検察に異論があるのであれば、再審という裁判の中で争えばいいのではないかという考えもあると思うのですが…
  
弁護士 若狭さん:
そういう考え方もあります。ただ刑事訴訟法は、有罪確定判決の重みを鑑みて、その前に再審開始を認めるかどうかという手続きを要しているんです。例えば、銀行のアプリを使うときにはダブルチェックがあるように、重要な問題であるために、きちんと何個も関門を設けようとするのが法律の制度趣旨なんです。


東京大学准教授 斎藤幸平さん:
バランスを取らなくてはいけないという考えは分かりますが、国民目線からすると、冤罪を生んできた側が、自分たちに都合がいいルールをつくろうとしているような不信感があると思います。

今回も最初は「全面禁止」であったのが「原則禁止」になり、しかも「本則」ではなく「付則」にしようとどんどんラインが後退してきてしまっていると感じます。本来であれば証拠の全面開示や、取り調べの可視化なども含めて冤罪を生まないようにしていこうという話が、中途半端に改正した事実だけで丸め込まれてしまうのではないかという不安があります。


「本則」と「付則」大きな違いは?

藤森キャスター:
「本則(法律の基本的ルール)」か「付則(補足事項)」かではずいぶん変わってくるのでしょうか?

弁護士 若狭さん:
効果的には、本則が10だとすると付則は1程度で、10倍程度の違いがあると思います。


藤森キャスター:
付則になると、抗告できる可能性があるということですね。


小川キャスター:
自民党幹部からは「これ以上の歩み寄りが難しい場合、法案提出が見送られる可能性もある」との声も出ています。袴田さんの冤罪事件をきっかけに始まった再審制度の見直しの議論ですが、そもそも検察側や国が判断を誤ったときに、どのように検証の目を自らに向けられるのかという問題でもあると思いますし、手続き論にとどまらず、これは誰のための議論なのかという原点を軸に問い続けていかなければならないと感じます。


弁護士 若狭さん:
今後、再審申し立てされる事件は、裁判員裁判で有罪になった事件が考えられます。裁判員裁判で日にちをかけて慎重に有罪判決を下したものが、再審開始決定が簡単に出てしまうことも考えられます。無罪判決を書きたいという裁判官はいるので、再審開始決定は地裁の裁判官が結論ありきで出してしまう恐れもなくはないです。

そのような恐れがあるので、裁判員裁判で有罪になった事件を地裁の1人か2人の裁判官だけで覆してしまうのが本当にいいのかどうかという議論を、国民を含めて多くの人でやるべきだと私は思います。

藤森キャスター:
自分たちも冤罪に巻き込まれる可能性があるということを考えて、当事者意識で語り合った方がいいですね。

東京大学准教授 斎藤さん:
国民全体でもっと議論すべきです。それが今だと、自民党と法務省と検察の駆け引きや譲歩で妥協という閉じた話になってしまうので、とにかく無実の人を生んではいけない、救わなければいけないという視点から、国民のためにも議論していきたいですよね。

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<プロフィール>
若狭勝さん
東京地検特捜部で元副部長
2014年から衆議院議員を約3年間務める

斎藤幸平さん
東京大学准教授 専門は経済・社会思想
著書『人新世の「資本論」』


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