
アメリカとイスラエルによるイラン攻撃から2週間。戦争は一般の人たちの生活に影響を及ぼしています。イスラエルのテレビ局では軍による「検閲」も行われていました。
【写真を見る】報道フロアには常に軍人が…イラン攻撃から2週間 戦時下のテレビ局で記者たちが直面する「軍の検閲」と「報道の自由」との葛藤【報道特集】
「アメリカとイスラエルは容赦なく人々を殺している」
イランの首都テヘランでは7日、複数の石油貯蔵施設がイスラエル軍により攻撃された。爆発による巨大な火柱で、夜の街は赤く染まった。テヘランでは「黒い雨」が降ったという。
WHO(世界保健機関)は、呼吸器系の疾患を引き起こすおそれがあると警鐘を鳴らした。
一般住宅にも被害が出ている。革命防衛隊に近い「タスニム通信」によると、テヘランの集合住宅が空爆を受け、市民約40人が死亡したという。
赤新月社 職員
「いまもがれきの下にまだ人がいる。一刻も早く救出しなくては。遺体もまだそのままで、早く運び出さなくてはいけない」
イラン全土では、民間人だけで1200人以上が死亡したという。
イラン国内から被害の様子などをSNSで世界に向けて発信しているという人がいる。
ルーホッラー・レザヴィ氏
「後ろの煙が見えますか。また攻撃された。ここは市街地だ」
報道特集の取材に応じたルーホッラー・レザヴィさん。民間の建物が爆撃される様子を目撃したという。
ルーホッラー・レザヴィ氏
「ほぼ毎日1、2回の爆発音が聞こえる。アメリカとイスラエルは容赦なく人々を殺している」
イランでは、国外とのネット通信はほぼ遮断されている。だが、レザヴィさんは政府から認められた特別なネット通信環境が利用できる立場にあるという。
そのため、YouTubeでの発信もこれまではできていたが…
ルーホッラー・レザヴィ氏
「残念なことに、私のYouTubeチャンネルは凍結された。なんの規約にも違反していなかったが、YouTubeはアメリカの管理下のプラットフォームだから。真実が広まることをアメリカがいかに恐れているのか分かる」
イスラエルへの反撃も続いている。
クラスター爆弾に白リン弾…双方が使う「非人道兵器」
3月9日、イスラエルではイランが放ったミサイルが着弾した。この攻撃で一般市民2人が死亡した。
イスラエル警察 幹部
「クラスター爆弾だ。ここだけではなく、2か所に攻撃があった」
クラスター爆弾。大きな“親爆弾”から“子爆弾”が飛散し、広い範囲を攻撃することを目的とした兵器だ。
多くの不発弾がでたり、無差別に被害が及んだりすることから、「非人道兵器」として国際条約(オスロ条約)で禁止されている。※イスラエル・イランともに条約に非加盟
村瀬健介キャスター
「きのう、この場所に着弾しました。『クラスター弾だったのではないか』と言われています。今もガラスが散乱していますし、破片が突き抜けた跡もあります。鉄の壁が折れ曲がって穴が空いているのがわかります」
現場には、爆弾の破片が貫通したとみられる穴が至る所に空いていた。クラスター爆弾が落ちた現場の目の前にある自動車修理工場の工場内のカメラにも…
――クラスター爆弾だった?
自動車修理工場の男性
「はい」
――なぜそれがわかった?
「小型の爆弾だった、大きなものではなかった。 車の窓も粉々だ。 ガラスの破片がすごかった。ここの窓ガラスも全部割れてしまった」
イスラエル軍は10日、イランから放たれているミサイルの半数がクラスター爆弾だと批判した。
しかし、イスラエルも隣国レバノンへの今回の攻撃で「白リン弾」を使用したと批判されている。辺り一帯を焼き尽くすことなどを目的とした「非人道兵器」とされ、現場を捉えた写真では白い煙が上空に漂い、その下にある住宅街が煙に包まれている。
宗教の聖地で見える戦争の影…歯止めが利かない戦禍で翻弄される市民
歯止めが利かない戦禍の中、翻弄されているのは市民だ。
村瀬健介キャスター
「エルサレムの旧市街のダマスカス門です。アラブ人、ユダヤ人、キリスト教徒も混じって生活をしている場所です」
複雑に宗教が絡み合うこの場所にも、戦争が暗い影を落としていた。
村瀬健介キャスター
「この戦争が始まってから、ほとんどの店が閉店しています」
普段は多くの巡礼者や観光客が訪れるエルサレム旧市街。しかし、今、わずかな店舗しか営業しておらず、閑散としていた。
店を開けていたアラブ系の店主に聞くと…
アラブ系の店主
「ここにシェルターはありません。だから多くの店が閉まっているんです。ユダヤ人地区にだけ安全な場所(シェルター)があるんですよ。間違いなく人種差別です」
祖父母の代から100年以上続くエルサレムに住む一族で、カフェのオーナーをしている男性は…。
カフェのオーナー
「日本(出身)だろうと中国、韓国、イスタンブール、エルサレム出身だろうと関係ありません。みんな同じ人間として扱われるべきです」
エルサレムを離れ、イスラエルの最大都市テルアビブへ向かった。テルアビブには、イラン出身のペルシャ系住民らが色とりどりの生地を販売している“問屋街”がある。
ヘルツェルさん
「イランで売れるのは女性がまとうためのの黒い布ばかりでしょうが、ここでは必要ありませんよ」
イラン系イスラエル人のヘルツェルさん。父親がイランからイスラエルに移り住んだ2代目だ。
ヘルツェルさん
「私はペルシャ人です。父も母もイラン出身ですから、今もイランに家族がいます。母の姉妹が向こうに住んでいます」
――この戦争についてどう思う?
「戦争自体は嬉しいことではありません。しかし、何か良い変化が起きようとしていることが嬉しいのです」
イスラエルでは、原則18歳以上の男女に兵役が課されている。ヘルツェルさんの息子は間もなく兵役に就くという。イランの現体制を良く思っていないが、息子が祖国と戦うことは望んでいない。
ヘルツェルさん
「18歳の息子が軍隊に入るところです。来年までには戦争が終わるよう祈っています。みんなのために、全てが上手くいくために」
「今回の戦争は核の脅威をさらに増大させただけ」
イスラエルの有力なシンクタンク、国家安全保障研究所の上席研究員シマ・シャイン氏。
情報機関モサドの元幹部でイランの分析を行ってきた。イスラエルはまだ戦争の目的を達成できていないと話す。
シマ・シャイン氏
「今回の戦争では核施設が攻撃されました。問題は濃縮されたウランがそこに残っていることです。イランが持ち出し、別の場所でさらに濃縮できます」
目的とは逆の結果をもたらすことを恐れている。
シマ・シャイン氏
「今回の戦争は核の脅威をさらに増大させただけです。今イランは核爆弾を保有したいはずです。より強力な抑止力になると考えるからです。ですから、これは戦争の負の側面になるかもしれません」
追い詰められたイランが、核開発を加速させる可能性があるという。イスラエルは、イランの核の脅威がなくなるまで戦いを続けるとみているが。
――戦争はどのように終わるとお考えですか?トランプ氏はネタニヤフ氏よりも早くおわらせたがってるようにみえますが
シマ・シャイン氏
「トランプには様々な懸念があります。1週間か10日ほどで戦争を終わらせたいと考えるかもしれません。ネタニヤフはそれに合わせる必要があるでしょう。アメリカが戦争をやめてしまえば、イスラエルだけで続けることはありません。一緒に始めて一緒に終わるでしょう」
――いつ終わらせるかを決めるのはトランプ氏なのですね。
「間違いなく始まりも終わりも、決めるのはトランプです」
戦時下のテレビ局 「軍の検閲」と「報道の自由」葛藤する記者
国民の8割が今回の攻撃に「賛成」だというイスラエルで、テレビ局はどんな報道をしているのか。
イスラエル全土への放送網を持つ民間テレビ局「チャンネル13」を取材した。いま扱うニュースは「戦争一色」だという。
チャンネル13 ユバル・タービナー COO
「全ては戦争について。たまに経済ニュースも扱うが、自宅待機の人たちがどうやって稼ぐのかなど、結局は戦争の影響を伝えている」
“イスラエルならでは”の施設もあった。頑丈なコンクリートで固められた地下の「シェルタースタジオ」だ。スタジオ内には無人カメラが2台。
ミサイルの警報が出されると、この場所から放送を続ける必要がある。さらに“戦時下のテレビ局”を物語る光景が…
報道フロアには、軍服に身を包んだ男性が座っていた。
村瀬健介キャスター
「軍の誰かが常に?」
チャンネル13 ユバル・タービナーCOO
「常にいます。戦時下だけだが。戦争が始まった2月28日以降ここにいます」
常に待機している軍人が番組に出演して、戦況を解説することもあるという。また、軍の「検閲」によって許可されない報道があるのも現実だ。
チャンネル13 ユバル・タービナーCOO
「公開が許されないと思う情報は、検閲官にたずねる。例えばテルアビブのどこかにミサイルが落ちたとして、正確にその場所を伝えることは許されていない」
軍の検閲と報道の自由の狭間で、葛藤しながら放送している記者がいる。
戦争特派員 オル・ヘラー 記者(チャンネル13の放送より)
「イランは飛び散るミサイル(クラスター爆弾)で攻撃してきています」
“戦争特派員”のヘラー記者が胸の内を明かした。
戦争特派員 ヘラー 記者
「私たちの仕事は、国民の戦意を保つことではない。ジャーナリストとして、戦争の真実を伝える重要な役割があります。疑問があればきちんと伝える。戦争がいつどう終わるのか、政権が掲げる『イランの体制転換』という戦争の目的が、本当に達成できるのかということも、追及しなくてはいけないのです」
政権に不都合な報道するとSNSで攻撃の対象に…“兆候”は戦争前から
記者たちが直面しているのは軍からの制約だけではない。政権に不都合な報道をすると、SNSで激しい攻撃にさらされるのだという。
戦争特派員 ヘラー記者
「SNSで叩かれていないイスラエルのジャーナリストなんて1人もいません。群衆から攻撃されている記者さえいます。もはや批判ではなくヘイトや誹謗中傷です。ヘイトが現実世界にまで波及してしまっているのが、今のイスラエルです。真実を伝えるという役割がどんどん難しくなっています」
こうした予兆は、今回の戦争が始まる前から起きていたという。ニュース番組のキャスターは…
ニュース番組キャスター ドリアさん
「ずっとです。戦時下で始まったことではありません。何年も前から。残念ながら、最近のイスラエルは大きく分断されていて、SNSがさらに分断を助長していると感じます。一般的に、ネタニヤフ首相を支持しない市民は、常に戦争に不満を言い、右派は好戦的で、ただ勝ちたいだけで、士気が高い。しかし現実はもっと複雑です」
攻撃の手を緩めないトランプ大統領だが、ここにきて批判の声も高まっている。
小学校へのミサイル攻撃は米軍の「誤爆」 高まるトランプ批判
女子児童ら175人が亡くなったイラン南部の小学校。
「ニューヨーク・タイムズ」は、これがアメリカ軍による誤爆だったと する軍の予備調査の結果を伝え、トランプ氏への批判が高まっている。
学校はイラン革命防衛隊の基地の跡地にあり、アメリカ軍が古いデータをもとに攻撃目標を立てたとしている。
当初、トランプ氏は「イランの仕業だ」と説明していた。
トランプ大統領(7日)
「それはイランがやったと考えている。彼らの兵器は非常に精度が低い。正確性など微塵もない」
イランメディアが公開した、攻撃の瞬間だとする映像。軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏は…
軍事ジャーナリスト 黒井文太郎氏
「大きさと形状が、米軍のトマホークに酷似している。トマホークミサイルは、米軍と英軍が実戦配備・運用しているが、最近オーストラリア軍とオランダ軍にも搬入されました。ただ今回のイラン攻撃に参加している国は、米軍とイスラエル軍だけ。イスラエル軍は持っていない。当然、イラン軍も持っていないから、これは米軍のものということになります」
トランプ氏は、アメリカ軍の誤爆が報じられると…
――軍の調査でアメリカの攻撃と判明したということですが?
トランプ大統領(11日)
「その件は知りません」
イタリア首相は「虐殺」と非難 日米首脳会談で問われる姿勢
アメリカ政治に詳しい三牧聖子教授は、当初、批判を抑えていた国も態度を変え始めていると話す。
同志社大学 三牧聖子 教授
「やはりアメリカとイスラエルの軍事行動には、国際法上問題があると。さらに、国民もこうした違法な軍事行動に協力したくないという世論も背負って、首脳の態度もだんだん変わっている」
トランプ氏に友好的だったイタリアのメローニ首相は、3月11日、強い言葉で攻撃を非難した。
イタリア メローニ 首相
「私は政府を代表し、イラン南部の学校で起きた少女たちの虐殺に対して、強い非難を表明する。遺族へ連帯を示し、速やかな責任の特定を求める」
だが、こうした中でもトランプ政権は、スポーツゲームと実際の攻撃の映像を組み合わせた映像で戦果をアピール。投稿したのはなんとホワイトハウスだ。
同志社大学 三牧聖子 教授
「こんなふうに自分たちが行っている戦争を正当化、さらには、茶化したりするような動画をわざわざ世界に向けて発信する。どういう感覚で戦争をやってるんだろうと」
来週予定されている日米首脳会談。日本はトランプ氏にどう対応すべきなのか。
――高市総理は法的な判断を今避けているが
同志社大学・三牧聖子教授
「ここまで明確な先制攻撃に関して何も法的評価をしなければ、トランプ大統領としては、『法的に問題がないとみなしてるなら、同盟国として協力してくれるよね。(日本は)一体何ができるのか』と、そういうふうに言われてしまって、なし崩し的にアメリカの問題がある軍事行動に巻き込まれていく。
訪米前に日本として、今回の軍事行動をどういうふうに考えているのか明らかにすべきだと思う。世界に対して『法の支配』を謳ってきた国として、日本がどう考えてるのかということは、やっぱりきちんと表明すべきだと思う」
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