ついに店頭販売が始まった随意契約の備蓄米。2000円台のコメを求め、連日スーパーには長蛇の列ができています。一方で、気になるのが「備蓄米」が行き渡った後の“コメ価格”。こうした中、独自にコメを集め5キロ3000円台で市民への販売を決めた自治体があります。なぜ実現出来たのでしょうか。
【データで見る】全国のスーパーで販売されたコメの平均価格の推移
「備蓄米」求め1000人行列
大阪で、約1000人。
先頭で並ぶ人(80代)
「昔は甲子園はみんな(前日の)夜から並んだもん。そんなこと思ったら楽です」
名古屋でも、約1000人。
備蓄米を求めて、2日も長蛇の列ができました。
記者
「開店を5分前倒ししてオープンしました。来店客が次々と備蓄米を手に取っていきます」
大阪のスーパーに並んだのは、5キロ税込み2138円の古古米です。
古古米を買った人
「コメ買うためだけに並ぶのが初めてだったので、重みを感じました」
中には、こんな人も…
千べろ家 ザビエル 高橋憲治さん
「並んだ甲斐がありましたね。持ち帰って今から“試作”ですね」
こう話すのは、大阪・堺市の飲食店に勤務する高橋さん。ご飯おかわり無料の500円ランチに、備蓄米が使えないか持ち帰って試食します。気になる炊きあがりは…
千べろ家ザビエル 高橋憲治さん
「若干おコメのにおいが強い。うま味っていうのは、ちょっと感じられないかもしれないですね」
その後、お酒や昆布を足すなど、試行錯誤の結果、美味しく炊けるように。3日にも「古古米ランチ」として提供する予定です。
2000円ほどの備蓄米が、大手スーパーに並び始めた一方で…
「羨ましい」備蓄米入荷できない店
記者
「こちらのスーパーのコメ売り場見てみると、5キロで4850円、さらに5190円となっています」
随意契約の条件を満たせず、備蓄米を入荷できない店は、高いコメしか販売できず、苦しい状況です。
セルシオジャパン食品バイヤー 久保田浩二さん
「行列をなしてもお客様が、コメを買い求めているような姿を目の当たりにすると、もちろん羨ましさというところは感じていますね」
2日夜、発表された5月19日〜25日までに、全国のスーパーで販売されたコメの平均価格は、5キロあたり4260円。前の週より25円値下がりしましたが、去年と比べて約2倍の価格となっています。
※(株)KSP-SPが提供するPOSデータに基づき農林水産省にて作成
セルシオジャパン食品バイヤー 久保田浩二さん
「随意契約のコメが放出・販売されるところの買い控えも、やはりお客さんの中ではあったんだろうと、売上の低迷は見られました」
さらに、このスーパーから歩いて20分ほどの場所には、今後2000円台の備蓄米の販売店舗を順次拡大する予定の「イオン」が…
セルシオジャパン食品バイヤー 久保田浩二さん
「やはり大手さんに行けば、いつでも安いコメがあるという状況が今後もお客さんの認識の中に根付いてしまうと、近くの大きいスーパーにお客さんを取られてしまう」
中小のスーパーや町の精米店向けに放出予定の備蓄米の契約申請は午後2時時点で1450件。農水省は予定していた枠を超える可能性があるとして、町の精米店向けには、午後5時で申し込みを締め切りました。
備蓄米を並ばずに買えるのはいつになるのか。
宇都宮大学農学部 松平尚也助教
「『2000円台のコメが1回食べてみたい』という感じで、需要が非常に高まっている状況。一巡したときに7月くらいには落ち着いて、他のコメも出回ってきて、備蓄米ブームが沈静化したときに、そこで並ばずに買えるようになるのでは」
備蓄米は、価格のゲームチェンジャーとなるのでしょうか。
財務副大臣「米価大きく下落しない」
自民党の幹部らが囲んでいるのは週末、販売が始まった備蓄米のおにぎり。
自民党 森山裕 幹事長
「おいしい」
自民党 小野寺五典 政調会長
「おいしいですね。新米と同じような感じ」
古古米を「新米のよう」だと大絶賛しました。
自民党・小野寺 政調会長
Q.これは簡単に手に入ったんですか?
「一応、順番に並んで買って…」
Q.何時間も並んで?
「うちの事務所でしっかり並んで」
終始、「美味しい」と繰り返した小野寺氏。「消費者の選択肢を広げたい」と強調しました。
自民党 小野寺 政調会長
「(備蓄米が)早く店頭にたくさん並んで、 みなさん並ばなくても買えるようになると、もうちょっと安心してもらえると思う。あとは流通を早く、量はしっかりありますから」
ただ、政府内からは「量が十分ではない」ため「コメの価格に大きく影響しない」との声も。
斎藤洋明 財務副大臣
「月に日本国民が60万トン以上コメを消費するわけですから、30万トンの全量出したって半月分でしかない」
「おそらく今年の秋はそんなに大きく米価が下落するということはないと思う」
農水省が「見立て誤った」
野党は国会で「そもそもコメが足りていないのではないか」と小泉大臣を追及しました。
立憲民主党 石垣のり子 参院議員
「2021年から少なくとも3年連続、生産量よりも需要実績の方が上回っている」
人口減少などで需要が減る中、余らないように生産量を抑えてきたコメ。
しかし、2021年には「需要」が「生産量」を上回り、その状態が3年連続で続いています。(出典:農林水産省資料)
小泉進次郎 農林水産大臣
「(農水省が)今まで見立てを誤ったことも事実なんです。『新米が出てくれば大丈夫』だと言って大丈夫じゃなかったわけです」
その上で、小泉大臣は…
小泉 農林水産大臣
「減反政策の在り方、コメを仮に増やすとすればどうあるべきか。令和7年(2025年)度中に基本的な方針を決め、そして令和9年(2027年)度以降の新たな水田政策に結びつける」
政府はコメの安定供給に関する関係閣僚会議を今週にも立ち上げ、コメ価格高騰の要因などを検証することにしています。
「市民に3000円台で販売」自治体独自の取り組み
こうした中、今年の夏、コメを5キロ3000円台で市民に販売することを決めた自治体が現れました。人口7万2000人ほどの大阪府泉大津市。市内の就学前施設や小・中学校の給食では、一昨年から市が栄養価の高いコメを子供たちに提供しています。
記者
「美味しい?」
5歳児
「お米がご飯に変わったとき、おいしい」
このコメは、独自の精米手法によって、玄米の栄養価を残した金芽米という白米です。市はこの金芽米について、市民を対象に、来月中旬からオンラインで販売予約の受付を開始。5キロ税込3500円で、1世帯当たり10キロまで販売することを決めました。
なぜ市民に安くコメを販売することができるのでしょうか?
大阪・泉大津市 南出賢一 市長
「コメ生産をやってる自治体と農業連携をして、直接の流通を作って、農家の収入を上げながら我々の市場価格に左右されない直接流通、ダイレクトサプライチェーンがあるからこの仕組みが実現しています」
市は、全国各地の農家と連携し、精米工場を通して直接供給してもらうことで、中間流通業者をカット。毎年事前に必要な量と価格を取り決め、市独自にコメを確保しています。市長は令和の米騒動を5年以上前から予測していたと話します。
大阪・泉大津市 南出 市長
「コメ不足、『令和の米騒動』が5年以上前から、これは起こると予測して対策してきた。我々が泉大津で確保した50トン分は市場価格に比べて店頭価格に比べて、約2割~3割安い状態でご提供できると思います」
市と連携している農家の1人が、滋賀県東近江市の小林弘子さん。この日は泉大津市の小学校で出前授業を行いました。
滋賀・東近江市の農家 小林弘子さん
「いまお米が不足。テレビでいっぱい流れてるね、古古米・古古古米がスーパーで売られている。私たちも一生懸命作っています」
琵琶湖のすぐ近くにある小林さんの田んぼでは、琵琶湖から魚が入り込み、産卵・成長する環境が保たれています。このことが、農薬をほとんど使っていない証しとされ、安全なコメとして、滋賀県の認証を受けています。
滋賀・東近江市の農家 小林弘子さん
「高い費用を使って手間暇かけて、コメを作ってるから『買ってもらえる』というところがあると、安心してコメを作れるというのが、農家さんの本音じゃないかな。泉大津市さんとの関係が途切れなく、使ってもらえれば嬉しいと思っています」
子供たちに品質の良いコメを食べてほしいという思いで、泉大津市と契約しました。ただ、今後、コメの値段が下がることに不安を覚えています。
滋賀・東近江市の農家 小林弘子さん
「大臣が変わられて、古古米・古古古米を2000円台で売ると言われたじゃないですか。今後のコメの値段、農家にとっては安くされると、農家の方が赤字になってしまうから、それは(緊急時の)備蓄米という感覚で捉えてほしい」
大阪・泉大津市 南出市長
「一つの問題は流通が複雑すぎて、農家の所得が上がりにくい構造になっていたというのが、コメ作りを離れる一つの要因だったと思います。この都市部の生活者と農村が直結して、できるだけシンプルな流通にすることで、農家の所得が上がる構造、そして市場価格に左右されずに、都市部の人間に届く構造が大事だと思います」
コメ価格の値下げは抜本的な対策になるのか…
藤森祥平キャスター:
自治体独自の取り組みとして大阪の泉大津市が、夏に販売する5キロ税込3500円のコメ。45トン=9000袋分を確保しています。
泉大津市の世帯数は約3万6000世帯。仮に全ての世帯が上限の10キロを購入しようとすれば、10世帯のうち約1世帯しか手に入らないという計算になるということです。泉大津市としては「来年は50トン以上確保する方針」ということです。
先を見越した対策で、見事な取り組みではありますが、量を増やすのはそう簡単ではない。
小川彩佳キャスター:
どれだけ、コメが確保できるのかという“課題”はありますが、自治体が主導してコメを確保していこうという動きについてはいかがですか?
TBSスペシャルコメンテーター 星 浩さん:
日本には約1800の自治体がありますが、コメの取れるところと全く取れないところや、スーパーがあるところと無いところがあり、それぞれ自治体が知恵を絞ってこういう取り組みをするのはいいと思います。石破さんが言ってる地方創生にも繋がると思います。
そして2日、全国のスーパーで販売されたコメの平均価格が発表されました。3週間ぶりに値下がりしたということなんですが、2日発表された金額価格というのは、「5月19日~25日までに販売されたコメ価格」ということですから、5月31日が約2000円の備蓄米の販売がスタートしたということで、31日以降の金額は反映されていないということに注意が必要です。注目は来週、再来週どうなるかという点ですね。
【備蓄米以外の価格も下がると思うか】
・下がると思う:35%
・下がらないと思う:56%
【コメの生産量を増やす】
・賛成が88%
※JNN世論調査より
政府は、今の取り組みで、銘柄米の価格も下がっていくと感じているのでしょうか?
TBSスペシャルコメンテーター 星さん:
今回は30万トンで、全体の生産量700万トンのうち微々たるものですから、これだけで下がるというのは無理だと思います。例えばスーパーに2000円と4200円の、2種類のコメが並ぶと、スーパーも4200円の方も下げざるを得ない状況になり、3000円台になるんじゃないかと政府は期待しています。しかし、それが根本的な解決になるかというと、そうでもないですね。
藤森キャスター:
もし下がらなければ、次にどんな手を打ってくるのでしょうか。
TBSスペシャルコメンテーター 星さん:
21年からコメが不足してたというのが明らかになりました。現在、高齢化していますから、今後どんどん減っていくんですよね。そうすると、供給を増やさなくちゃいけない。そのためにはコメの価格を安定させなければいけません。安心して作るためにも、ある程度の価格を設定して、足りない場合は所得保障も行うなどのシステムを導入するのか、欧米では既に導入されている制度です。
石破総理は、関係閣僚会議を開いて、コメ不足、コメの高値の検証をすると言っています。あらゆる政策をチェックして、抜本的な改革ができるかどうか、踏み出せるか、石破総理にとってはリーダーシップが問われる局面になったと思いますね。
藤森キャスター:
まずはその会議の中身ですね。
小川キャスター:
実行できるかどうかというところまで、真価が問われますね。
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<プロフィール>
星浩さん
TBSスペシャルコメンテーター
福島県出身 政治記者歴30年
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