中居正広氏と女性のトラブルをめぐる一連の問題を受けて、フジテレビと親会社のフジ・メディア・ホールディングスは、第三者委員会の調査報告書を公表しました。
第三者委員会は、一連の問題で「女性Aが中居氏によって性暴力による被害を受けたもの」と認定。「重大な人権侵害が発生した」としています。
また、中居氏と女性Aとの関係性、両者の権力格差、フジテレビにおけるタレントと社員との会食をめぐる業務実態などから、「本事案はフジテレビの業務の延長線上における性暴力であった」と認定しました。
そのうえで、本事案の報告を受けたフジテレビの港社長ら3名は、中居氏と女性Aの関係性が番組共演を通じたものであることを十分に認識可能だったとして、プライベートの問題だと即断するのではなく、必要な事実確認をしたうえで、対応を検討し、意思決定を行うことが適切だったと指摘。「被害者ケア・救済の観点からも不十分な対応だった」としています。
また、第三者委員会は、フジテレビの港社長らが人権問題リスクの認識を誤り、危機管理としての対処をしなかったと指摘しています。
中居氏の依頼を受けた「フジテレビの幹部が中居氏サイドに立ち、中居氏の利益のために動いた」と指摘。中居氏のために、フジテレビのバラエティ部門の弁護士を紹介したことも明らかにしました。中居氏の利益のための行動は、女性Aに対する二次加害行為に当たり得ると指摘しています。
結論として、「フジテレビの対応は経営判断の体をなしていない。港社長ら3名は性暴力への理解を欠き、被害者救済の視点が乏しかった」としています。
「二次加害行為など、一連の行為によって、女性のAの被害をさらに拡大させた」ことなどを指摘。経営陣の対応について、「思慮の浅い意思決定と被害者に寄り添わない対応がステークホルダーからの信頼を失わせ、フジテレビを危機的状況に至らしめた」と断じています。
■類似事案について
第三者委員会は、不適切な会合の実態があったかについて、「フジテレビの一部には社員、アナウンサーらが取引先との会合において、性別・年齢・容姿などに着目され取引先との良好な関係を築くために利用されていた実態はあったというべき」と指摘しています。
「フジテレビでは、全社的にハラスメント被害が蔓延していた評価できる」としたうえで、「フジテレビにおいて培われた誤った認識、対応が被害者によるハラスメント被害申告をためらわせ、適切な対処がなされず、結果としてさらにハラスメント被害が生じるという、負の連鎖が繰り返されてきた」と分析しています。
▼人権侵害リスクの防止や人権救済メカニズムの整備が不十分だとしたほか、▼「男性優位の同質性の高い構造がトップダウンで人権意識の鈍さをもたらし、ハラスメントが容認されやすく、信賞必罰が徹底されない企業風土を作り出している」と指摘しています。
また、第三者委員会は、日枝久取締役相談役がフジテレビグループの人事権を掌握していると感じているかというアンケートに対し、役職員の82%が「感じる」と回答したと明らかにしています。
そのうえで、「役員が日枝氏の方ばかり見て行動している」「日枝氏に気に入られた人物が出世する」という選択肢に過半数の回答者が選択したということです。
日枝氏は「現在でも経営に強い影響力を及ぼしており、社内の組織風土の醸成に与えた影響も大きい」と指摘。そのうえで、「セクハラを中心とするハラスメントに寛容な企業体質は日枝氏だけでなく、当社の役職員全員の日々の言動から形成されたものである」とも分析し、「日枝氏のみならず取締役会メンバー全員に経営責任が認められる。港社長の任命責任を日枝氏に問う声もあるが、その任命責任は取締役会全員が負うべきである」と指摘しています。
■再発防止策に向けた提言
第三者委員会は、再発防止策に向けて、▼被害女性に真摯に謝罪し、対話を始めること、▼被害を救済し、二次被害から守り抜くことなどを提言。▼人権方針実施体制の見直し、▼人権デュー・デリジェンスの強化、▼人権救済メカニズムの構築を迅速に進めるべきとしました。
▼リスク管理体制の見直し、▼取引先・取材先からのハラスメントに対応する体制構築、▼人材の多様性の確保、▼今年6月の株主総会に向けて役員指名ガバナンスを強化することを求めています。
また、「性的暴力・ハラスメントという人権課題はフジテレビ固有のものではなく、メディア・エンターテイメント業界における構造的な課題である」と指摘。
「セクハラが行われても『ここは芸能界だから』という加害者の甘えが罷り通り、それが被害者の諦めを生み、被害が再生産されてきた。この状況のまま放置されれば、この業界に人権意識の高い有望な若い人材は入ってくることも定着することも困難となり、人的資本が枯渇するおそれがある」として、メディア・エンターテイメント業界が協同して健全化に向けた取り組みを進めるべきと提言しています。
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