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“おもてなし”入社式が増加 企業の思惑は「人材を逃したくない」一方で、新入社員の本音は?【Nスタ解説】

経済
2025-04-02 02:17

4月1日から新年度が始まり、多くの企業では入社式が開かれました。なかには新入社員に手厚い“おもてなし”をする企業も。そこには企業側の切実な事情がありました。


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「人材を逃したくない」増加する“おもてなし”入社式

井上貴博キャスター:
西武HDの“おもてなし”入社式では…


・「西武鉄道」貸し切りで移動
・「ベルーナドーム」で開催
・「ユニフォーム」を着用
・新入社員代表vs社長の「始球式」

といった取り組みが今年初めて行われました。新入社員の心に響くように、イベントのような形で入社式が執り行われました。


こういった“おもてなし”をする入社式が増えているということで、「少子高齢化」による人材獲得競争の中で「人材を逃したくない」という企業の思惑がでています。


報道局経済部 竹岡建介記者:
経済部で様々な企業を取材しますが、本当に多くの企業から「とにかく人材を逃したくない」「引き留めたい」という声が聞こえてきます。

というのも、今、人手不足が深刻化していて、就職活動の現場を見に行っても、“超”売り手市場の状態です。企業側からすると、競争が激しい中、採用活動を行い、ようやく社員として入ってもらうという苦労があります。

今年入社した方々も、企業側からすると本当に苦労して何とか入っていただいた方々なので「なるべく厚遇をして新入社員を繋ぎとめたい」という切実な思惑や事情があります。


数字で表す…すでに始まっていた“企業のおもてなし”

井上キャスター:
企業が新入社員に対して「入っていただいた」という時代ですね。

“おもてなし”を数字で表すということで、企業は軒並み「初任給」を上げています。


<大卒の初任給>
・3月入社 ファーストリテイリング 33万円(3万円アップ)
・4月入社 オープンハウスグループ 36万円(3万円アップ)
・4月入社 明治安田生命保険 33万2000円(3万7000円アップ)
・4月入社 伊藤忠商事 32万5000円(2万円アップ)
・4月入社 大和証券グループ本社 30万円(1万円アップ)
・2026年4月入社 三井住友銀行(4万5000円アップ)

企業が優秀な社員を獲得したいと考えると、初任給を上げるのが一番人件費には響かないですし、それで囲い込めるというのは、理にかなっているのかなという感じもします。


TBS CROSS DIG with Bloomberg CCO 竹下隆一郎さん:
初任給が上がるのが、新入社員の立場だと一番嬉しいと思います。始球式も素晴らしい試みだと思いますが、社長相手だと逆に気を遣ってしまって、私なら「嫌だな」と思ってしまいます。

特に物価高ですし、やはり「お金」が一番響くと思います。あとは、今の新入社員の方は転職が当たり前なので「どういう条件で」「どういった企業なのか」「企業理念」をもう少し謳っていくと、人材が確保できると思います。

ただ、賃上げは日本の経済にとって良いことだと思うので、この流れはどんどん加速してほしいです。


井上キャスター:
賃上げができる企業と体力がなくてできない企業の差は、どうしていこうかという所があるかもしれません。


出水麻衣キャスター:
人材獲得競争が激化すると、他のところで“おもてなし”をしなくては、と考えてしまうので「実業」で何をしていくか、ということに注力してほしいです。


文芸評論家 三宅香帆さん:
最近読んだ古屋星斗さんの著書「ゆるい職場-若者の不安の知られざる理由」という本の中で、“ゆるい職場”や“楽しい職場”を企業の人事側は打ち出そうとするけれど、実は若者が求めているのは、成長・転職、実績を積めることなどで、ミスマッチが起きているという面白い本でした。

“おもてなし”をするということ、成長の機会をあげることがかみ合ってないような気もしていて、そのあたりは今後、日本の企業が変わるきっかけになるのかなと考えます。


井上キャスター:
令和の時代だから優しくしてあげなきゃいけないけれども、それを後輩たちが本当に求めているのかが、難しいですね。


報道局経済部 竹岡記者:
初任給を2万円上げた伊藤忠商事の岡藤正広会長は「学生さんは僕の経験から言って、(企業を)初任給で選びがち」だとおっしゃっていました。金融機関の人事担当者も「これまでは横並びの初任給だったが“抜け駆け”する企業が出てきた。自社だけ上げないと人が採れない」としています。


井上キャスター:
これを“抜け駆け”とするのは日本社会らしいと感じますし、今だとインターネットサイトで初任給の一覧があるので、みんなそれを見ますよね。


「いずれはステップアップの転職をしたい」新入社員の展望

新入社員に意気込みを聞きました。


ローソン 新入社員
「物価上昇で厳しい世の中なので初任給が見られがちだが、自分は過去の経験などでローソンを選んだ」

三井住友銀行 新入社員
「(転職について)自分が満足するまでは続ける。目標に近づけるまでは頑張ろう」


報道局経済部 竹岡記者:
新入社員の本音を伺いたいということで、別会社の新入社員に聞いてきました。

新入社員
「初任給が上がっている会社は昇給も期待できるから入社を決めた」
「いずれはステップアップの転職をしたい」


井上キャスター:
転職が当たり前になり、終身雇用でなくなっていくのは、素晴らしい流れだと思います。


TBS CROSS DIG with Bloomberg CCO 竹下隆一郎さん:
また、この会社に戻ってくる人も出てくると思います。
その社員が辞めたとしても何年かしたら、実力や新しいスキルをつけて戻ってくるということもあるかもしれません。このような流れが出てくると、日本全体の雇用の流動化が進んで、経済の底上げに繋がると思います。


文芸評論家 三宅さん:
転職が当たり前になると、いろんな働き方があって当たり前になっていくと思うので、新卒だけでなく、例えば兼業でやっている人や転職してきた人など、いろんな人がいた方が企業自体も成長すると思います。


井上キャスター:
今まで選択肢が限られていたので、より多様になっていくことで日本経済全体が回っていくのではないかということなのかも知れません。


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<プロフィール>
竹岡建介
TBS報道局経済部
経済官庁など取材
入社7年目のギリギリZ世代

三宅香帆
文芸評論家
著書「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」で「新書大賞2025」受賞 31歳

竹下隆一郎
「TBS CROSS DIG with Bloomberg」CCO
元ハフポスト日本版編集長・PIVOT創業メンバー


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